腹壁ヘルニア
腹壁ヘルニア
腹壁ヘルニアとは
腹壁ヘルニアは、腹部の筋肉が弱くなることでお腹の中の臓器（腸や脂肪など）が腹壁から飛び出して、膨らみとして現れる病気です。
これは、立つ姿勢をとったり、お腹に力をいれたりすると起こりやすく、重い物を持ち上げる動作、妊娠、過体重、慢性的な咳などが原因で発生することがあります。
整容性ももちろんですが、放置すると痛みや不快感が生じます。
また力を入れることによって内臓が飛び出すため、お腹に力を入れることが難しくなることで便秘になりやすくなります。
内臓の損傷や壊死を引き起こす可能性があるため、適切な治療が推奨されます。治療方法はヘルニアの種類や症状の重さによって異なりますが、多くの場合、手術が必要となります。
飛び出したところを押しても臓器が戻らなくなることを嵌頓（かんとん）と言いますが、嵌頓した臓器は腐ってしまうことがあるため、このような場合は緊急手術が必要になることがあります。
治療の必要性
腹壁ヘルニアは大きくなる、痛みが出る、痛みが強くなるなど、症状が悪化することはあっても、自然に治ることはありません。腹壁ヘルニアを治すためには、手術による治療が必要です。
主な腹壁ヘルニアの種類
鼠径部ヘルニア
腹壁の最も一般的なヘルニアで、主に鼠径部（脚のつけ根）に発生します。
臍ヘルニア
臍（へそ）に発生します。小さい子供に多く見られますが、過体重や妊娠などをきっかけに大人にも発生することがあります。
腹壁瘢痕ヘルニア
瘢痕（はんこん）とは傷のことです。腹部の手術を受けた際の傷が原因で発生するヘルニアです。開腹手術の大きな傷から腹腔鏡手術の小さな傷まで、さまざまな傷で発生することがあります。
手術の種類
開腹手術
開腹手術は、膨隆した腹壁を直接切開してヘルニアの修復を行う方法です。ヘルニアの袋を取り除き、弱くなった腹壁を補強するために人工繊維のシート（メッシュと呼びます）を使用することが一般的です。
傷が大きくなるため、術後の痛みも強く、入院期間が長くなります。
腹腔鏡手術
腹腔鏡手術は、お腹に小さな傷を作って行う低侵襲手術です。
小さな孔から、お腹の中を覗くカメラと手術を行う道具を入れて、ヘルニアの修復を行います。
開腹手術に比べて痛みが少なく、回復が早いという利点があります。
ロボット支援手術
ロボット支援手術は次世代の腹腔鏡手術です。高度な精密機器である手術ロボットを外科医が操作して腹腔鏡手術を行います。
精緻な動作、手ブレ防止などの機能によって、より正確で安全なヘルニア修復が可能となり、術後の回復時間の短縮と合併症のリスクの低減が期待されます。
日本ではヘルニア修復術に対するロボット支援手術は保険適用になっておりませんが、当院では、東京医科歯科大学病院 高難度新規医療技術部（承認番号2019-003、2023-010）の承認を得て実施しています。
鼠径部ヘルニア（鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア）とは
脚の付け根（鼠径部といいます）の組織が弱くなり、お腹の中の臓器（腸や脂肪）などが飛び出して鼠径部が盛り上がってしまう病気です。
長い間立つ姿勢をとっていたり、お腹に力をいれたりすると臓器が飛び出しやすくなり、鼠径部の違和感や痛みが出現します。
整容性ももちろんですが、日常生活に支障をきたすため治療が必要となります。
飛び出したところを押しても臓器が戻らなくなることを嵌頓（かんとん）と言いますが、嵌頓した臓器は腐ってしまうことがあるため、このような場合は緊急手術が必要になることがあります。
鼠径部ヘルニアの治療
鼠径部ヘルニアは大きくなる、痛みが出る、痛みが強くなるなど、症状が悪化することはあっても、自然に治ることはありません。鼠径部ヘルニアを治すためには、手術による治療が必要です。
鼠径部ヘルニアの手術
当院では、お腹に小さな傷を3つ作って行う腹腔鏡手術と鼠径部に5cm程の傷を作って行う鼠径部切開法の2種類の方法を主に行っています。
また、手術支援ロボットを用いたロボット支援鼠径部ヘルニア修復術も行なっております（ロボット支援手術については別項を御参照下さい）。
どの手術も手術時間は片側で1〜2時間程度です。
手術日の夜から食事が可能で、通常は翌朝に退院です。術後１カ月程度は、重たいものを持たない、激しい運動はしないなど、お腹に過度な圧力をかけるようなことは避けるようお願いしています。歩行や軽い運動、入浴については問題ありません。
ロボット支援鼠径部ヘルニア修復術
鼠径部ヘルニアの最新の治療です。 腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術は、鼠径部切開法と比べて傷が小さく、術後の経過が良い低侵襲手術とされています。 しかし、縫合など技術的に難しい部分があり、慣れていない術者が行なうと痛みが残る、再発が多いなどのデメリットがあります。 腹腔鏡手術の利点に加え、腹腔鏡手術の技術的困難点を克服したのがロボット支援鼠径部ヘルニア修復術になります。
ロボット支援手術は３D視野、多関節機能、手振れ防止機能などにより、腹腔鏡手術では難しいところを補うことが可能となっております。
当院では胃癌や大腸癌など多くの消化器癌に対してロボット支援手術をおこなっており、ロボット支援手術の恩恵を預かってきました。
鼠径部ヘルニアに対するロボット支援手術の最大のメリットは術後の短期、長期の疼痛の軽減と言われています。海外ではその手術の良さが認められ、ロボット支援鼠径部ヘルニア手術の数が急増しています。
しかし、現在の日本においては、ロボット支援鼠径部ヘルニア手術はまだ保険診療の適用にはなっておりません。
そこで当院では、次世代のヘルニア手術である、ロボット支援鼠径部ヘルニア手術を自費診療で提供しております。入院費用は手術費も含めて約45万円です。
ロボット支援鼠径部ヘルニア修復術は、東京医科歯科大学病院 高難度新規医療技術部（承認番号2019-003）の承認を得て実施しています。
腹壁瘢痕ヘルニア、臍ヘルニアとは
手術受けたお腹の傷の部分や臍（へそ）の組織が弱くなり、お腹の中の臓器（腸や脂肪）などが飛び出して腹壁が盛り上がってしまう病気です。立つ姿勢を取ることで、お腹が膨隆するため、今まで着ていた服が着られなくなったりすることがあります膨隆部の違和感や痛みが出現することもあります。放っておくと大きくなることもあり、大きなヘルニアは治療も難しくなるため、早めの専門病院への受診が望まれます。
腹壁瘢痕ヘルニア、臍ヘルニアの治療
ヘルニアが大きくなる、痛みが出るなど、症状が悪化することはあっても、自然に治ることはありません。ヘルニアを治すためには、手術による治療が必要です。
腹壁瘢痕ヘルニア、臍ヘルニアの手術
当院では、お腹に小さな傷を作って行う腹腔鏡手術と膨隆部やその近傍に傷を作って行う切開法（開腹手術）の2種類の方法を主に行っております。また、手術支援ロボットを用いたロボット支援ヘルニア修復術も行なっております（ロボット支援手術については別項を御参照下さい）。手術時間はヘルニアの場所や大きさ、過去の手術内容などによって異なります。
通常は手術日の夜から食事が可能で、腹腔鏡手術では術後1-3日程度、開腹手術では術後4-7日程度で退院となります。術後１カ月程度は、重たいものを持たない、激しい運動はしないなど、お腹に過度な圧力をかけるようなことは避けるようお願いしています。歩行や軽い運動、入浴については問題ありません。
腹腔鏡ヘルニア修復術 – eTEP法
eTEP法は近年注目されている、腹壁瘢痕ヘルニアや臍ヘルニアに対する腹腔鏡によるヘルニア修復術です。
従来の腹腔鏡手術と比べ、術後の痛みが小さいため、術後の回復、社会復帰が早いとされています。
手術がやや難しく、導入されている施設がまだ多くありませんが、当院はeTEP法の経験が豊富であり、様々なヘルニアに対してeTEP法を行っています。
ロボット支援ヘルニア修復術
腹壁瘢痕ヘルニアの最新の治療です。
腹腔鏡腹壁瘢痕ヘルニア修復術は、開腹手術である切開法と比べて傷が小さく、術後の経過が良い低侵襲手術とされています。しかし、腹壁の縫合が特に技術的に難しく、再発の原因になるなどのデメリットがあります。腹腔鏡手術の利点に加え、腹腔鏡手術の技術的困難点を克服したのがロボット支援腹壁瘢痕ヘルニア修復術になります。
現在の日本においては、ロボット支援腹壁瘢痕ヘルニア手術はまだ保険診療の適用にはなっておりません。そこで当院では、次世代のヘルニア手術である、ロボット支援腹壁瘢痕ヘルニア手術を自費診療で提供しております。入院費用は手術費も含めて約80万円です。
ロボット支援鼠径部ヘルニア修復術は、東京医科歯科大学病院 高難度新規医療技術部（承認番号2023-010）の承認を得て実施しています。
鼠径部ヘルニアの手術を希望される方は
何曜日に受診されても対応致します。ヘルニア専門医の診察を希望される方は、水曜日に専門医が外来を行っておりますので受診ください。
当院は大学病院であり、心肺機能や年齢、様々な病気をお持ちであるなど、手術に不安がある方でも安心して治療を行って頂けるように配慮しております。遠慮なく外来でご相談ください。