胃がんについて
食道・胃外科
胃がんについて
進行度(ステージ)について
胃がんの治療は、進行度(ステージ)によって決まります。進行度(ステージ)は、進達度(腫瘍の深さ)、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無から総合的に判断します。
進達度(腫瘍の深さ):胃がんの場合、「大きさ(横のひろがり)」よりも、「深さ」が治療方針を決めるうえで大切になります。胃がんの深さは、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)、CT検査などを用いて診断し、深さによって、T1a〜T4bに分類されます。
リンパ節転移:胃がんは進行すると、胃の周囲の「リンパ節」に転移することがあります。リンパ節転移の有無はCT、腹部エコー検査などで診断します。
遠隔転移:さらに胃がんが進行すると、肝臓、肺、腹膜など胃からはなれたところに転移することがあります。このような転移を「遠隔転移」といいます。CT検査、腹部エコー検査などを用いて診断します。
日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第15版(2017年10月)」金原出版より
進行度(ステージ)別の治療について
胃がんの治療は、進行度(ステージ)におうじて、内視鏡的切除、外科的切除(手術)、抗がん剤治療のいずれか、あるいはこれらを組み合わせた治療を行います。
※1 術前化学療法:術前に一定期間(2-3カ月)抗がん剤治療を行い、腫瘍を縮小させてから手術を行うことがあります。
※2 術後補助化学療法:完全にがんを切除できた場合でも、再発予防のために抗がん剤治療を1年間投与することがあります。
※3 Conversion手術:抗がん剤治療が著効し、根治切除可能な状態となった場合は外科的切除を検討します。
外科的切除(手術)について
我々は外科的切除(手術)を専門としていますが、消化器内科と協力して、術前診断(検査)から内視鏡治療、手術、化学療法(抗がん剤治療)まで、胃がんの診療のすべてを担当しています。胃がんをはじめ、各種大腸疾患の豊富な治療経験に基づいて、それぞれの患者さんの病状を総合的に判断し、その患者さんに最も適した治療を提供しています。 外科的切除(手術)の対象となるのは、遠隔転移がない胃がんで、内視鏡的切除では取り切れない病変ですが、当科では切除不能の胃がんに対して、抗がん剤治療が著効し、根治切除可能な状態となった場合の外科的切除(Conversion手術)も積極的に行っております。
胃切除の方法
胃切除の方法には、幽門側胃切除(下2/3の切除)、噴門側胃切除(上1/2の切除)、胃全摘(胃を全て切除)があります。病変の部位、深達度(腫瘍の深さ)などにより切除範囲を決定します。胃の周辺の臓器にがんが浸潤している場所は、膵臓の一部、副腎や横行結腸の一部、横隔膜の一部などを同時に切除することもあります。
リンパ節郭清
胃切除の際に、胃とともに胃の周囲にあるリンパ節を切除します。胃のすぐそばのリンパ節と、胃から少し離れたリンパ節を合わせて切除する「D2リンパ節郭清」が標準的に行われます。早期がんでは郭清するリンパ節の範囲を狭くした手術を行います(D1またはD1+郭清)。
消化管再建
胃の手術は胃を切除した後の食物や消化液の通り道を確保するために、食道や残った胃、小腸をつなぎ合わせること(再建といいます)を行います。おもな再建方法を図に示します。切除後の状態を考慮して最も適切と考えられる再建方法を選択します。
手術アプローチ
手術アプローチには、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術があります。当科では根治切除可能な原発性胃がんに対しては、低侵襲手術(特にロボット支援下手術)を積極的に行っています。
手術後の経過
手術のあと、順調に経過した場合は手術翌日から水分摂取、2−3日から食事摂取を開始します。退院までの期間は術後6-8日程度となります。退院後は継続して自宅での食事療養が必要です。入院中に管理栄養士と面談し、胃切除後の食事療法について確認をしていただきます(栄養指導)。
しかし、手術のあとは一定の頻度で合併症が発生します。合併症とは、手術に伴い発生する、患者さんにとって不利益な病状のことをいいます。胃切除術のあとに、合併症のみられる割合は約10-20%と報告されています。当科で2018年から2021年までの期間に、合併症により術後2週間以上の入院が必要になった患者さんの割合は8.2%でした。
合併症の多くは薬剤の投与、局所麻酔での傷の処置、体内への管の挿入で軽快します。しかし、これらの治療でよくならない場合には集中治療や再手術を行うことがあります。また、生命にかかわる可能性も0ではありません。もちろん、すべての患者さんに対して、合併症を起こさないよう細心の注意をしていますが、合併症の発生を完全に防ぐことは困難です。